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2004.05.19
・蛋白尿の意味と対策

タンパク尿の意味と対策

■尿にタンパクが出るって?

 職場の健診などで偶然、尿にタンパクがみつかることがあります。しかし、それを知らされたとき「ああやっぱり。それで体調が悪かったんだ」と納得する人はあまりいません。大多数は「別になんともない」と思うでしょうし、必要な詳しい検査を受けずに放置してしまう人もいるくらいです。
 でも、タンパク尿の原因である腎臓の病気は、症状に現れずに進行し、症状に気づいたときにはもう透析が必要になる一歩手前、といこともあります。
一方で、タンパク尿が出ていても腎臓の病気ではない場合もあります。たとえば、長時間の起立、運動したあと、または熱が出たときだけにタンパク尿が現れる場合などです。


■腎臓の働き

* からだの水分の量を調節する

 からだの中の水分の量を調節して、むくんだり、逆に脱水になったりすることのないように働いています。

* 血液を濾過する
 腎臓は血液中の不要なものをろ過して尿を作ります。腎臓の働きが低下してくると、血液中に不要なものが溜まったり、逆に必要なものが尿に混ざって出ていってしまいます。

* 血圧を調整する
 腎臓は血圧を調整するために、水分やナトリウムなどを調節し、また、血圧を調節するホルモンの分泌も行っています。

* その他の働き
 この他にも腎臓には、赤血球を作るホルモンを分泌したり、骨の強度を保つビタミンDを活性化する働きがあります。


■尿にタンパクが出る悪循環

 タンパクはからだにとって大切な構成成分ですから、健康であればほとんど尿中に出ません。しかし腎臓に病気が起きると、ろ過機能をもつ糸球体をタンパクが通過して尿に出るようになります。
 本来糸球体を通過しないはずのタンパク成分が通過してしまう状態は、糸球体そのものにとっても負担になります。そのため、病気によって尿にタンパクが出ること自体が、病気の進行を早めます。

■血圧が上がる悪循環

 腎臓に病気があると腎臓内部の血管が細くなったりして、腎臓を流れる血液の量が減ります。また糸球体も目詰まりの状態になります。すると腎臓は、血液量を保つために血圧を上げるホルモンを分泌して血圧を上げ、ろ過を増やして尿量を保とうとしています。
 この仕組みは一見理にかなっているように思われますが、血圧が高いと糸球体内部の細い血管が傷めつけられ、結果的に腎臓の機能はより早く低下してしまいます。そして腎臓の機能低下がさらに血圧を上昇させるという悪循環が起こり、病気が進行します。

■タンパク尿も高血圧も自覚症状はほとんどない

 このように、タンパク尿と高血圧は腎臓の病気で引き起こされるものですが、同時に病気を進める原因にもなります。どちらも自覚症状がほとんどないために、治療の必要性を理解しにくいものですが、それらをきちんと管理することは、病気の進行を抑えるうえで、とても重要なことなのです。


* これらは腎臓病のサインかもしれません。気になる方は、早めに調べてもらいましょう。

◇ 尿の泡立ちがなかなか消えない
◇ 朝起きたとき、足や顔のむくんでいる感じがする
◇ 無理をしていないのになんとなくだるい
◇ 夜中2回以上トイレに立つ
◇ めまいや立ちくらみが多くなった
◇ 動悸・息切れがする
◇ のどが渇く
◇ 食欲がない
◇ 血圧が高くなってきた
◇ 頭痛を感じることが増えてきた
◇ 顔色の悪さが気になる

■病気の程度や治療の成果を知るには検査が必要

腎臓の病気は症状が現れずに進行するので、検査が大切な意味を持ってきます。

尿の検査

◇タンパク尿
健康な人は陰性で、腎臓に病気があると陽性になります。
病気の重症度によって、弱陽性から強陽性となます。

◇アルブミン尿
タンパクの中でも分子量がより小さいものをアルブミンといいます。タンパク尿のほとんどはアルブミンですが、微量のアルブミンはタンパク尿が陽性になる前から尿中に現れますので、病気の早期発見に役立ちます。

◇血尿
腎臓病のほかに泌尿器の病気でも現れます。腎臓に原因がある場合の血尿は、見た目ではわからないことが多く、顕微鏡で調べて初めて識別できます。


血液の検査

◇クレアチニン
血液中の老廃物です。腎臓の働きが低下するとクレアチニン濃度が高くなります。
基準は 男性:1.1mg/dL以下位 女性:0.8mg/dL以下位 です。
ただ、クレアチニンはおもに筋肉で作られる物質なので、筋肉量の少ない女性や高齢者では、腎臓が悪くてもあまり高い値にならないことがあります。

◇尿素窒素(BUN)
やはり血液中の老廃物の一種ですが、食事の影響で変化しやすく、タンパク摂取が多いときは高めになります。
基準は  10~20mg/dL位  です。

■生活の工夫で病気を抑えましょう

腎臓の病気の治療目的は、病気の進行を抑えて、残っている腎機能をできるだけ長く保つことです。しっかり治療すれば必ず病気の進行は遅くなります。
治療のカギとなるのは

①原疾患の治療
②タンパク尿を増やさない
③血圧のコントロール

① の原疾患の治療とは、例えば糖尿病の人でも血糖値をきちんとコントロール
すれば、腎臓の病気を起こさず、起きても進行を防ぐことができるという意味です。
ここでは②と③について、少し詳しくお話しします。

* 食事の工夫
 「尿にタンパクが出る悪循環」でお話ししたとおり、タンパク尿が出ること自体が、腎臓にとって負担をかけます。そこで腎臓の負担を軽くするために、必要以上のタンパクを摂取しないように指示されることが多くなります。
 とはいってもタンパク質は必要不可欠な栄養素ですから、ただ摂取を減らせばよいというものではありません。炭水化物の摂取を増やすなどして、十分なエネルギーを確保する必要があります。また、血圧管理のために減塩がかかせません。
 実際には医師が病気の状態やからだの栄養状態を考慮し、摂取すべきタンパク量やエネルギーを判断します。それによって栄養士などと相談しながら、無理にならないように食事を工夫していきましょう。

* 翌日に疲れをもち越さない
 からだに疲れを感じたときには、腎臓も疲れています。睡眠をよくとって、その日の疲れを次の日にもち越さないようにしてください。なお、病気の状態によっては積極的な運動を控えたほうがよい場合もあります。その場合は1日の運動量・労働量を、医師と相談して決めてください。

* 感染症に注意
 かぜなどの感染症にかかると腎臓の働きが低下します。インフルエンザの流行シーズンには、「人ごみを避ける」「うがい・手洗いをする」「マスクをする」などの対策を立てましょう。